暁杜

るろうに剣心 蒼紫巴 蒼操 小説ブログです。

散華 二

蒼紫は馬から降りると、泥炭地の様子をうかがった。

―――十絶の陣。御頭のいるところまで、十数人の盾がある。

蒼紫は小太刀をかまえた。

待つこと数間。

まず、彼方から鎖釜が飛んできた。

「お命、頂戴。」

鎖釜を振りまわしている忍びが言った。

――これは、囮だ。

蒼紫は鋭く苦無を投げた。

「うがっ、ごぼっ。」

鎖釜の男の喉笛に苦無は突き刺さった。

その間も蒼紫は草むらを移動し、もう一人の忍びに襲い掛かっていた。

「ううっ。」

蒼紫の小太刀の一閃にまたひとり、忍びが倒れた。

そこへ手裏剣が間を待たず飛んでくる。

蒼紫は小太刀でそれをよけた後、また刀をひらめかせた。

足場の悪い泥炭地で、蒼紫は必死で刀をふるった。

忍びは襲うたびに増えているかのようだった。

―――これだけの人数をただ消耗させるために置くのか。あの御沙薙という女は。

蒼紫は数十人を切り伏せて、泥炭地から扇状地の中腹にまで出た。

蒼紫の脳裏に、危険を知らせる信号が点滅した。

―――いる。

敵が、いる。

蒼紫は一歩を踏み込もうとしたが、その歩みを止めた。

口に苦無をくわえると、もう一刀をすばやく抜いた。

二刀流の構えになった。

空はまだ明るいはずなのに、異様にこの扇状地の空だけが暗い。

「後をとったぞ。」

銀礼の声がした。

蒼紫の体がその瞬間、何かに引きずられるように傾いた。

―――斬鋼線。

目の前の坂の先に、御沙薙が立っている。

御沙薙は片腕をスッと虚空に伸ばした。

腕の先から何万羽の蝶がひらひらと、極彩色の色をしながら舞いはじめた。

幻術であるのはわかっていた。

しかし蝶の動きは、狂うように目の中に飛び込んでくる。

御沙薙は言った。

「緩慢に、蝶に包まれながら、死ね。」

御沙薙は言うと、刀を構えた。

銀礼は斬鋼線を引きながら、釜状の武器を構えた。

「こうして、前後に敵がいれば、いかな御庭番衆でも、破れまい・・・・抜けられぬぞ、蒼紫。」

びょう、と音をたてて銀礼の手から武器が飛んだ。

蒼紫の首をその武器は狙っていた。

ザン!

鈍い音がして、蒼紫の首は血潮をまいて、地面に転がった。

鰐淵銀礼は狂喜した。

「やったぞ・・・・蒼紫を俺はやったぞ!はははははははっ。」

だがその時、闇の中で蒼紫の声がした。

<<その技は見事・・・・だが貴様の技、真の円月の陣ではなかろう・・・・・。>>

「貴様っ。」

銀礼はあわてた。

あわてて地面に落ちた首を見返した。

―――変わり身!

蒼紫の首と思ったものは、木の根であった。

「あわてるんじゃないよっ。」

御沙薙がどなった。

御沙薙は言った。

「幻術には幻術を・・・・という事かい、蒼紫。だがおまえの体には斬鋼線がかかっている。どこに潜もうが、我らには無駄だ。そして、おまえの幻術などすぐに敗れる幻術を我らは用意している。」

銀礼は御沙薙の言葉に、すぐに体勢をたてなおした。

そうだった、ここでやるんですな、あねさん・・・。

「こういう、幻術をね!」

御沙薙は叫んで斬鋼線を引いた。

ボコッ、と音がして、地面の中から現れたものは――――。

その瞬間蒼紫の中で、何かが壊れた。

それまで平静を保っていた外側が崩れ落ち、中からどす黒い感情が噴出した。

―――外法。

斬鋼線の中心におかれ、虚空に吊り下げられたものは、斬り刻まれた幼い操の、変色した死体であった。

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