暁杜

るろうに剣心 蒼紫巴 蒼操 小説ブログです。

元治元年春 一

雪が舞っていた。 降りしきる雪の道に、紅い花びらが点々と続いていた。 花びらは手からこぼれ落ち、やがて途切れた。 青年は暗い瞳で、一軒のこじんまりとした武家屋敷を眺めていた。 かすかに、彼は心の中でその者の名を呼んだ。 ―――出ておいで、そこから……

◆あとがき◆

うー、書き散らした作品なんで、これは恐縮なんですが、一言だけ・・・。 蒼紫と巴の交渉の順番なんですが。 ?催眠術の「影うつし」で講にいる巴を、蒼紫がおびきよせる。←「早春賦」 ?「返してください」という巴に、茶室で麻薬入りの抹茶を入れて無意識下…

最終章・九ノ一

最終章・九ノ一 巴は今、旅の途上にあった。 江戸から京へ―――かつて清里も通った道のりを、今はこうして身をやつした御庭番衆とともに杖をついて歩いている。 護衛をするのは、西の闇の武の連中であった。 ――私は・・・・できなかった・・・・。 巴はともす…

夕凪

5 夕凪 おだやかな、風の凪ぐ夕暮れ。 山肌に広がるすすきの原に、巴は一人立っていた。 彼が来るのを待っている――― 一人、いつまでも待つつもりで――――。 「ずっとそうしていたのか。」 背後から声がかかると、巴は笑顔で振り向いた。 「ええ。こうして下界…

死ガ二人ヲ別ツマデ

4.死ガ二人ヲ別ツマデ 「それで姉さんは死んだのだな?」 「そーだよ・・・・・。」 「抜刀斎は巴の死体をどうした?」 「あいつは大切に荼毘に伏したよ・・・・住んでいた家ごと燃やしたんだ・・・。」 催眠状態の縁が、陶然とした口調で話している。 蒼紫は…

早春賦

3 早春賦 まだ巴がこの忍びの里に来た頃のことだ。 巴は清里の復讐を胸に最初、来たのではなかった。 そんなだいそれたことなど、はじめからできようはずもない。 巴は江戸で清里の消息を尋ねまわっているうちに、そういう者らの集会に参加したのだった。 …

秋鈴

2.秋鈴 高い雲の下の峰の先に、巴は長い槍を持って今立っている。 ――来るわ・・・・。 印を結んでから、槍に手をかけ、虚空をキッ、と巴はにらみすえた。 蒼紫の手裏剣は何処から飛んでくるかわからない。 と、その時空間を引き裂いて、手裏剣が雨のように乱…

春の宵

1 春の宵 「蒼紫・・・・・。」 そっと、夜影に白い指先を伸ばした。その触れたあたり。 巴の手は、今、蒼紫のたくましい腕の中に包まれている。 陽に焼けた蒼紫の腕と、ほの白い巴の手の対比が、黒白のようにくっきりと闇の中で際立っていた。 春の宵は、…

◆あとがき◆

ようやく終わりました。今回は本当に、いつになったら「完」の文字ところへたどり着けるのか、大変でした。 しかも「完」に相当する章をはじめからアップしていたので、やはりその重圧がすごかったです。こういうことは、やるもんじゃない・・・・と思いまし…

哀路 五

蒼紫は銀座通りの裏の一筋を歩いていた。 古い店が立ち並ぶ中の一角の、ひとつの古ぼけた店構えの写真館の前で立ち止まった。 戸口にガラスに銀色の蒸着した文字で、店の名前が書かれている。 蒼紫は何の変哲もない、その店の扉をあけた。 中には鉄ストーブ…

哀路 四

高荷恵は、その午後、神谷道場から、蒼紫の指定した寺へ急いでいた。 戻ってきた剣心や薫たちの手当てをしてから、一週間になる。 上海から上陸した、悪の組織は一網打尽になったようだが、剣心たちがさんざんな目にあって―――しかもそれが、四乃森蒼紫もその…

哀路 三

剣心は、先ほど取り乱していた時とは異なり、穏やかないつもの調子に戻っていた。 蒼紫はその様子をじっ、と観察している。 ――緋村、貴様は・・・・。 剣心は言った。 「蒼紫、最初の出会いの時から拙者はそなたには、不審感を抱いていたのでござる。確かに…

哀路 二

王大人は蒼紫に言った。 「君は面白い男であるようだ。雪代巴は君の恋人だった女だろう。私はその巴と瓜二つの女を用意した。緋村抜刀斎は、その女に情けをかけたし、弟の雪代縁もその女にはずいぶんと優しかった。しかし君はその女を見たとたん、その首をは…

哀路 一

「しっ、前に出るな。」 呉黒星の叱咤にその顔をにらみつけると、操は工場の張り出しから身を乗り出した。 縛られて、背中には銃で脅されている。 薫と茜もご同様だ。 だが操は今必死だった。 たった今、惨劇が起こったのだ。 遠目でよくわからないが、蒼紫…

虚像 四

蒼紫と剣心たちは、廃工場の坑道を急いでいた。 「なんだか、熱くなってきたようでござる。」 剣心が言った。 空気が重く、ねっとりと熱くなってきていた。 この廃工場の終点に何があるのか―――三人は、闇に目をこらした。 最初に映ったのは、やはり火だった…

虚像 三

その頃巻町操と神谷薫、御堂茜の三人は、地下坑道に出ていた。 見回りに来た見張りの男を、薫に気をとらせている隙に、操が飛び掛り、うまく倒すことができたのである。 なんとか地上に出なければ―――操は人差し指の指先をしめらせて、風の来る方角を読んでい…

虚像 二

「ひどい目に合いましたね・・・・・。」 瀬田宗次郎は言った。 蒼紫たちは、やっとの思いで地下水道を出て、煉瓦作りの廃工場のようなところに来ていた。 途中、水を呑んだ宗次郎を介抱してやらなければならなかったし、剣心はというと、蒼白な顔で前をふら…

虚像 一

「下の水路が開いたようだ・・・・。」 雪代縁は、遠い水の音を聞きながら、階段を急いでいた。 その様子には、先ほど剣心らと相対した際に見せていた余裕はない。 いや、先ほどは縁の敵に対する威嚇だったのかも知れない。 今や彼は先を急いでいた。 剣心や…

人誅 五

剣心と蒼紫は、先導する宗次郎に従って、暗いレンガ製の地下水道を歩いて行った。 宗次郎は敵がいるというのに、何か楽しそうだ。 蒼紫に向かって声をかけてきた。 「四乃森さん、あなたとこういう処を歩くのは久し振りですね。」 「・・・・・・。」 「やだ…

人誅 四

その日の夕刻、縁に呼び出された水道橋へ、剣心、左之助、蒼紫は到着して賊が来るのを待っていた。 弥彦も同行したがったが、左之助が説得し、神谷道場で待つようにした。 橋の袂の瓦斯灯が、淡い銀色に灯りだした頃合いであった。 はるかな橋の向こうから、…

人誅 三

「う・・・・ここは・・・・・?」 御堂茜はようやく、気がついた。 暗闇の中に、天窓からの一条の光が差し込んでいて、光の中に湿っぽい埃が舞っているのが見えた。 小さな四角の窓には牢格子がはまっていた。 ――牢獄。私は一体・・・・・。 茜はゆっくりと…

人誅 二

相楽左之助は白法被を羽織った肩で風を切るようにして、路地裏を歩いていた。 剣心の具合が、あの「人誅」の張り紙を見てからどうも良ろしくない。 今も臥せっていて、恵が玄斎先生のところから時々様子を見に来ていた。 恵は剣心の簡単な診察を終えると、左…

人誅 一

漆黒の闇の中に、女が一人座っていた。 周りには豪奢な中国風の調度品がしつらえている。 その豪勢な部屋のある屋敷は、東京湾を望む高台にあった。 闇が揺れて、背の高い中国服の男たちが女のそばに立った。 「薬の量は?」 男の一人が、女の瞳孔の開きを調…

谺声 七

蒼紫が彦馬に会ってから数日後のことだ。 蒼紫は今、荒川沿いの問題の私娼窟の近くに張り込んでいた。 無駄でも何でも、やらなければならない任務だ。 と、その時である。 ―――抜刀斎が現れるとは。 蒼紫は一瞬わが目を見張った。 剣心がふらふらとした足取り…

谺声 六

剣心は今、河岸をひとりで歩いていた。 ―――薫殿は拙者の残した巴の日記を読んだだろうか。 多分、読んだ。 読んだはずだ。 薫の目が、いつもと違って動揺していた。 もう少しだ・・・・・拙者のことをわかってくれる薫にするのは、もう少しだ。 巴と祝言をあ…

谺声 五

蒼紫は斎藤に会った次の日、定宿にしている裏宿屋から、日本橋にある警察の特務課に出向いていた。 斎藤の勤める部署とは全く違っており、犯罪捜査に関する係りである。 鑑識と言ってもいいかも知れない。 丸眼鏡をかけた、中背のさえない中年男とその部下が…

谺声 四

蒼紫はその夜、暖簾の店で呑んでいた。 ――呑めないお酒なんか、呑んで。 巴のとがめる声が、耳朶に響いた。 蒼紫の顔に苦笑が浮かぶ。 ――俺は、最低だな。 操を奪うようにして、東京につれてきた自分だったが、いざ操と顔をつきあわせてみると、巴との比較が…

谺声 三

東京の山の手に、その女学校はあった。 洋風のミッションスクールは少人数制で、教師は宣教師のシスターであり、授業は最新の英語の授業があるというので、近くの高級住宅に住まう子女らが通っていた。いわゆる、名門校ではあるが、あの赤門ほどでは決してな…

谺声 二

その日、神谷薫は久し振りに倉の整理をしていた。 剣心はこのところ、元気だが、山懸卿の訪問を受けて、なんだかそわそわしているように、薫には見える。 ――大陸かぁ・・・・。 山懸卿の相談ごとは、どうやら大陸に渡ってもらいたいという事らしいが、剣心は…

谺声(かせい) 一

「あーめー、いらんかえー、 あーめー、いらんかえー。」 物売り娘の木魂のような声が響く、さびしい往来、と言ってもそれなりににぎわった帝都の一筋を、今、上京してきた瀬田宗次郎と、刑期を追えた悠久山安慈が歩いていた。 「不二さんも連れてこれればよ…